2008/04/26

子育ては言葉の教育から

表題は、外山滋比古さんのPHP文庫の本のタイトルからです。
幼児教育で忘れてはならない39章と題して、エッセイ風にこどもと言葉のあり方を巡って記しています。その中でひっかかったことがあります。それは次のことばです。

「子育ては仕事ではなく、芸術です。空気の絵を描く芸術です。こどもの心のカンバスに絵を描く画家の喜びと苦労があります。」

この本の最後に記されたこのことばには、生活する生きるからだが芸術していないことには、いくらカンバスに絵を描こうとしても絵にならないといっているように聴こえてきます。子育てはともすると親の義務感や責任感といった考えに押し切られ勝ちですが、実は、自らの喜びや自己実現を自ずと求める行為だと言い切る視点は、現代の芸術観自体をも揺るがす力を秘めていると感じます。
あとがきにこうも記しています。
「ことばの教育というと、すぐ文字を書かせ、読ませることと考える常識も、幼児にとっては迷惑です。幼いこどもにとってのことばは声をもったことばです。できれば母の声で教えたいものです。」
「教育の基本は幼児のときに覚えることばであると考えています。この学習は学校の生徒が机に向かい、頭でするのと違って、遊びの中で体で覚えます。そういう体で覚える勉強の方法はまだよく確立しているとは言えませんが、小学校のまねではいけないのははっきりしています。」
遊びと学びのありようについての教示がここには見出せます。からだが頭を強くしていく方法、「丈夫な頭と賢いからだ」の方法を芸術が教えてくれると思います。
『子育ては言葉の教育からー幼児教育で忘れてはならない39章ー』
外山滋比古著、PHP文庫1997版
追記;ブックカバーの装画は、五味太郎さんです。五味さんといえば、『じょうぶな頭とかしこい体になるために』ブロンズ新社の本の著者です。