2007/12/12

アートミーツケア学会横浜大会を覗いて

●12月の8,9日と二日間、横浜ArtBank1929にてアートミーツケア学会の大会がありました。
会長の鷲田清一さんは、大阪大学の総長でもありますが、基調講演で、アートミーツケアの名称は、実は「アート見つけや」という。
アートと福祉が出逢うというこの学会ならではの、「ふわふわ」感が、心地よかった。
初日は、播磨靖夫さんのあいさつから、アサヒビールの加藤種男さん、擁護老人ホームさくら苑の桜井里二さん、大阪市大の山口悦子さんらによるディスカッションではじまりました。
それぞれの立場から「臨床するアート」の大会テーマに寄せてのお話がありました。
加藤さん;<アートは冒険する、市民のアートリテラシーの向上とアートの変化>を、「アートは何かの役に立つことはない、だから、人々のものの見方、考え方を挑発し、心を動かし、社会を変えることができる。」との視点で事例紹介を踏まえてのお話。
桜井さん;Art Of Life(AOL)という視点から、「生きることは表現することだ」として、アートを広くとらえること、とりわけデス・エデュケーションという死と向き合うことにアートの可能性をお話。確かに、死は、開始の始につながるなあと思った。
山口さん;病院におけるアートの役割に「まちづくり」のように「なんかおもろいことできへんか?」のアプローチを提唱。あえて「癒し」、「セラピー」、「やさしさ」といった枠組みを忌避してきたという。アートへの期待は、想定外の可能性を挑戦する態度を奨励するためだという、アートによる社会変革意識とでもいえる積極的な話でした。
今回は、プレゼンテーションとして、事例紹介がありました。
1、名古屋造形芸術大学の「やさしい美術プロジェクト;病院とアーティストの協働による<安らぎのある、地域に開かれた病院>の創出。
2、「地域精神医療における描画の在り方」東京芸大大学院の先端芸術表現専攻と千葉の浅井病院との事例研究。
3、女子美術大のメディアアート学科によるアート&デザイン・ファシリテーターの養成というテーマからの成果として、タッチパネルを使った療育支援ソフトの紹介
4、慶応大学教養研究センターの「三田の家」プロジェクトの紹介。
5、神戸芸工大ファッションデザイン学科によるeven art projectの紹介。アウトサイダーたちの感性をデザインにミックスしてオリジナルブランドを立ち上げようと<ミックスサイダー>というブランドの紹介。
6、山梨のプラネタリウムの番組作りでの「星の語り部」の紹介。視覚に障害をもつがゆえに触れることのできない星空を語り部活動で感じようとする試みには、ロマンあふれるものがあった。
二日目は、鷲田さんの講演「臨床する知とアートの力」から始まる。
;臨床とは、もともと医者がベッドサイドに往診に行くことから、現場にいくこと、現場の場所性を重視する。アートは、もちろん、哲学も場所性をもつことで、専門と非専門のあいだにゆらぎをもたらすことの大切さを事例をもってお話。事例に本学の映画や舞台での活動が紹介されていて、ちょっとうれしく思った。
その後は、5つのテーマにわかれてのテーブルトークのセッションに。
僕は、「百聞は、一見をしのぐか;美術館、博物館のソーシャル・インクルージョン」という美術鑑賞をめぐってのトークセッションに参加。19名の参加者全員が、まずは自己紹介となぜこのセッションに参加したかのフリートークからはじまる。学芸員、教員、学生、作家、音楽家、施設職員と、多様な顔ぶれで並河恵美子さんの司会で時間をすごす。
全体に二日間、濃密な時間が流れ、多くの刺激と可能性や勇気や元気をもらった。
帰り際、播磨さんとの会話で、「一挙に芽が吹き出したようで、以前では予想もつかなかったよ」とのことばに<アート見つけや>の実感が確かに!あった。